オフィス開設の際忘れてはならないのが、業種によって必要なオフィスのスペースやゾーニングは異なるという事です。
例えば、営業主体のオフィス開設であれば、チームがディスカッションしやすいようデスクは対抗式に配置するのが適しており、来客用ゾーンは比較的大きく確保することが必要ですが、技術職のオフィス開設であれば、個々が作業に集中しやすいよう、デスクは背面式が適しており、来客用ゾーンは小さくても差し支えありません。
さて、弁護士など士業事務所のオフィス開設では、作業に集中できる環境と、クライアントとも共有スペースの確保が大切になりますので、レイアウトやゾーニングのポイントを解説します。
士業事務所向きのレイアウトのポイント
士業事務所のオフィス開設にかかるレイアウトを検討する場合、まず必要なことは基本方針を決定することです。単に「働きやすい職場」といっても抽象的過ぎて、結果、デスクを整然と配置しただけで、使い勝手の悪いオフィスになってしまう事もあります。
基本方針を決定する際には、まず、業務内容を分析していく必要があります。士業に係るオフィス開設であれば「クライアントからの相談により仕事の依頼を受け、担当者が1つの案件に対して集中して資料作りを行い、必要に応じて他の弁護士とミーティングを行う。また、取り扱う案件は非常に秘匿性が高く、長期間資料の保管が必要である」と定義付けできます。
つまり、士業事務所に係るオフィス開設においては「個々の社員が業務に集中できる環境を条件とし、必要に応じたミーティングスペース及び秘匿性が確保されたクライアントとの共有スペースを確保できること。また、セキュリティが確立された情報管理スペースが確保できること。」が基本方針となります。
さて、基本方針に基づいてオフィス開設する場合大切なのは、個々の社員が業務を行う社員専用ゾーンを確保することです。つまり、ゾーニングの前に、執務スペースのレイアウト、すなわち1チームあたりのデスクの配置から決定していきます。
士業の場合、業務の大半は資料作りとなりますから、別にミーティングスペースが確保できるなら、背面式もしくはスクール形式が適しています。また、新人社員が多いオフィスでは、個別に指導育成する観点から、スクール式の方がより適していると言えます。
1チーム当たりのデスクの配置が決まれば、各チームからコピー機や会議室などの共用スペース、文書保管庫など情報管理スペースまでの距離が概ね同一となり、かつデッドスペースが発生しないようレイアウトを決定していくことにより、大まかな執務スペースが決まります。
士業事務所に必要なゾーニングと動線について
オフィス開設の際、ゾーニングと導線は、業務の効率性やセキュリティの面でとても重要になりますので、慎重に検討する必要があります。
まず、士業にかかるオフィスに必要なゾーニングは大まかに3点あります。まず、1点目は社員専用のゾーンになります。ここは、一般執務スペースと、共用スペース、情報管理スペースに大別できますが、社員が日々業務を行う一般執務スペースにおいては、業務内容に応じたデスクの配置を行うとともに、共用スペース、情報管理スペースまでの導線をできるだけシンプルに確保することが大切です。また、士業という性格上、情報管理スペースについては、社員区分によって入室できる人を限定するなど厳重なセキュリティ体制を設けることが重要です。
2点目には来客用ゾーンですが、士業の場合、クライアントのほとんどが予約来店となりますから、待合室等は必要ありませんので、オフィスの入り口付近に受付を設けるだけで構いません。
3点目は、社員と顧客が共用するゾーンであり、実際にクライアントと打ち合わせを行うスペースとなります。士業の場合、1日当たりに対応するクライアント数によって、仕切られた部屋を複数確保することが必要となります。また、レイアウトのポイントは、来客用スペース(受付)に隣接した位置にレイアウトすることにより、受付から共有スペースまでの導線をしっかりと確保することが大切であり、できる限りオフィス入口付近にレイアウトします。クライアントが執務スペースを横切ったり、入ることがないような導線を確保することが必須条件です。
オフィス全体における各ゾーンの割合ですが、社員専用ゾーンが7割程度、来客用ゾーンと社員が共有するゾーンを併せて3割程度が一般的です。また、ゾーンの配置は、オフィス入り口付近から来客用ゾーン、社員との共有ゾーン、社員専用ゾーンとするのが理想です。
まとめ
オフィス開設に係るレイアウトを検討する場合、最初に業務内容を考慮した基本方針を定めることが大切です。士業の場合、個々の社員が集中しやすい執務スペース、クライアントとの打ち合わせるためのスペース、セキュリティが確保された情報管理スペースが確保されていることが重要となります。
特に、執務スペースについては、日々の業務の中心となるスペースですから、士業の場合、社員が業務に集中しやすい、スクール式もしくは背面式でデスクを配置するのが効率的です。
また、オフィス開設に係るゾーニングでは、顧客と社員が共有するゾーンをオフィスの出口付近にレイアウトし、受付からの導線をできる限り短くすることがポイントです。